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フィンランド・フィスカスの思い出とテーブルカルチャー(2002年 冬)
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2002年 冬


 フィンランド・フィスカスの思い出とテーブルカルチャー

前回はイギリス湖水地方のナショナルトラストの話をしました。長い長いブランクとなりました。今回はフィンランドのフィスカスの話をしてみたいと思います。

 2001年春フィンランド・フィスカスを訪れました。ヘルシンキから列車と自動車を乗り継いで2時間あまりのところにフィスカスの村があります。デザイナー、クラフトマン・アーティスト100名あまりがそこで創作活動をしています。美しい自然の中で工房、スタジオ、ギャラリー、ホテル、レストランが点在し、新しい創造の場を広げています。シンプルな中にも温もりのあるデザインは生活感のある豊かさを表現しています。

フィンランドは人口505万人の小国ですが187788もの湖沼があり、森林面積が国土の65%、耕地面積が8%、国土の3分1が北極圏に属しています。まさに自然に恵まれた国と言ってよいでしょう。日本ではムーミンでおなじみです。フィンランドは北欧の自然に恵まれた国というイメージの他に最近では世界で最も経済競争力がある国として注目を集めています。そしてフィンランドはデザインにおいても優れています。携帯電話の(NOKIA)や陶器のアラビア社(ARABIA)、そしてフィスカス(FISKARS)の刃物があります。

フィスカスは世界的ブランドとして有名ですがフィスカスの地を後にしたのは1990年でした。以来、その跡地はクリエータ達に提供されさまざまなアートとデザインの活動が始まったのです。このような活動を知ったのが岩手県の大野村でした。大野村のイベントにフィスカスのデザイナー達が来ていたのです。フィスカスの活動を知って大変興味を持ち機会があれば訪れたいと思いました。そして昨年の春それが実現しました。

 そして、ギャラリーT&Mではフィスカスの小品を用いてフィンランドと日本の茶道を融合したテーブルカルチャーを表現してみました。フィンランドは最北の地にあり厳しい自然条件の中にありますが、豊かな生活文化を育んできました。一方、日本は北海道から沖縄まで南北に延びた列島は多様な自然と文化を有しています。ギャラリーT&Mのある場所、ここ蔵王はやはり豊かな森と大地に恵まれています。フィンランドの自然と東北の自然には何か親しみのある共通点があるように思いました。それは自然を生かし、自然を愛でる、そして自然を取り入れる生活文化が双方にあるということです。日本もフィンランドも家のつくりや家具、食器など生活に使う道具類も自然素材を最大限に活かしてきました。

フィスカスのデザインやクラフトを見た時、そのシンプルさ、ぬくもり、素材の持ち味の表現など、日本のものとアレンジしてみたい欲求に駆られました。そこで茶道のスタイルとのアレンジを試みてみました。私は多少お茶を嗜んでおり、白いスープのボールはお茶碗に、厚い木製のカッティングボードは菓子皿にし、現代のモダンな鉄瓶と茶入れを用いて、立礼(りゅうれい)スタイルで表現してみました。立礼とはテーブルに坐った形式の茶道スタイルで明治以降に行われるようになりました。

 小さなテーブルの上で二つの国の文化の融合したテーブルカルチャーの試みはとても楽しいものでした。抹茶をこんなスタイルで飲んでもお茶の雰囲気は出せるものだと思いました。このスタイルでフィンランドの人を日本のお茶を楽しんでくれるでしょうか。今度このスタイルをフィスカスの人達に紹介しようと思っています。どのような感じ方をするのか大変興味のあるところです。

これから自然をどのような考え方で維持発展させていくのか、農村や地域の生活文化をどのように創っていくのか、地域の文化をどのように継承していくのか、これらの個々の問題は相互に結びついておりトータルな視点で考えないと改善していかないことだと思います。21世紀を迎えて自然と文化に対して日本には考えなくてはならない多くの課題があります。大きく捉えて行動することも大事ですが個々の生活レベルで楽しみながら工夫をしながら考えてみることも大事のように思います。フィスカスの活動はそんな事を感じさせてくれました。

次回は引き続きさらに詳しい話をしてみたいと思います。


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