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2000年 秋


 夏の終わりに −T&Mの想い−

野山の夏の賑わいも8月も終わりになると秋の気配がそここに見え隠れする。当ギャ ラリーの周辺も秋の装いを深めている。当ギャラリーがオープンしたのはまだ雪が降り積もる3月の下旬であった。春のファッションプレート展と銘打って企画展を行ったまではよいが吹雪く日もあって、暖炉の炎を見ながら萌いづる春を夢想したものである。たまたま今年は季節の変わり目に企画展を行ってきた。

当ギャラリーは版画やクラフト、デザインを紹介しているが、その主旨と言えば版画 やクラフト、デザインを通して自然や生活文化に目を向ける機会を作るというものであった。当ギャラリーを主催している私の専門と言えばデザインであり、その中でも工業デザインが主とした専門である。現代はさまざまな専門がありその分化深化も日毎に進んでおり、ともすると専門の中に埋没し身近にある自然の営みも季節の移り変わりも感じることなく日々が過ぎてしまっている人も私を含めて多いのではないだろうか。自然の一部としての私、地域に生活している私が自覚できなくて、組織の中の私、仕事の中の私が意識の八割以上を占めているのだとすれば何ともったいないことであろうかと気付いたのが最近である。

そんな折19世紀の博物画に触れる機会があり、荒俣宏氏の博物画の著書に啓発され博物画の手彩色版画とともにターナー原画の版画、そしてスウェーデンやイギリス、アメリカの伝統的なクラフトなどを見るにつれ、その背後にある自然や生活文化に対する豊かな感性を改めて感じたのである。西洋の18世紀、19世紀は産業革命の時代でもある。経済的、技術的に富と生産を増大させるため専門分化が始まる世紀でもあった。その中にあって18世紀、19世紀の動植物版画は自然を客観的に科学的に捉えようとする試みであるが写真とは異なり絵画的表現と文学的表現、ユーモアが画面に入り込み何とも言えない魅力を醸し出している。ここには次元の異なる事柄や事物を横断的に捉える見方が入っておりひとつの世界観を提示している。

またスウェーデンやイギリス、アメリカのクラフトの中で、たとえばShakerの家具などはその禁欲的な形態の中に感じるのは堅苦しさではなくシンプルライフを営むことが真の豊かさに通じることを伝えているように感じられるのである。そしてこれらのクラフトも現代の生活と空間にしっかりと息づいている。伝統(Tradition)と近代(Modern)は対立しているのではなく連続しており都市と田舎も連続している、その連続性、継続性を見い出すこと、感じることが何でもない日常の風景に彩りを添え豊かなイメージを与えてくれるように感じられる。

Forest Gallery T&Mはそんなイメージを与える場所として、感じる場所としてありたいと願っている。現在はターナーの原画の版画展と英国湖水地方の版画展を行っているが、当ギャラリー周辺の蔵王山麓の風景も湖水地方の版画に負けない実に魅力的で豊かな自然が息づいている。次回以降版画やクラフト、デザインに息づく自然や生活文化を綴っていきたい。


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